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小児溺水で人工呼吸が減少、転帰悪化の全国分析

小児溺水の蘇生解析

開催日:3月29日

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小児溺水の蘇生解析
人工呼吸って子どもの溺水で本当に必要なの?
岡山大の全国解析(2012–2023)では、小児の溺水では人工呼吸を含むCPRが転帰改善に重要と示されました。人工呼吸の減少は死亡や重度後遺症の増加と関連しています。
目撃者の自分は見つけたらどう対応すればいい?
まず119通報と胸骨圧迫を開始し、可能なら人工呼吸を含む蘇生を行ってください。ポケットマスクなどで換気を安全に行う訓練・器具の普及が推奨されます。

溺水で止まる呼吸──小児の院外心停止における“人工呼吸”の現在地

国立大学法人岡山大学の研究グループは、2012年から2023年に発生した小児の溺水(おぼれ)による院外心停止症例を対象に、目撃者による蘇生法の変化とその転帰への影響を全国規模で解析しました。解析に用いたのは総務省消防庁が管理する「All-Japan Utstein Registry」で、長期間のデータを用いた全国研究としての特徴があります。

本研究は、溺水に伴う心停止が主に低酸素による呼吸障害に起因することから、胸骨圧迫(胸骨圧迫のみ)と人工呼吸を含む蘇生(CPR)という2つの実施形態の変化を重点的に検証しました。研究結果は2026年3月10日付でElsevier社の学術誌『Resuscitation』に掲載されています(DOI: 10.1016/j.resuscitation.2026.111049)。

【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 2

研究が示した主な傾向

解析の結果、近年においては目撃者が行う人工呼吸の実施率が減少し、その一方で胸骨圧迫のみでの蘇生が増加していることが明らかになりました。溺水は呼吸停止から低酸素状態へ移行するため、人工呼吸が転帰に重要な影響を与えると従来から考えられている点に対して、今回のデータは懸念を示しています。

さらに、胸骨圧迫のみで対応した群は、人工呼吸を含む蘇生群と比べて死亡または重い後遺症のリスクが高いことが確認されました。目撃されていない症例に限定した解析でも同様の傾向が認められ、発見時点での対応がその後の転帰に結び付くことが示唆されています。

  • 対象期間:2012年~2023年
  • データベース:All-Japan Utstein Registry(総務省消防庁)
  • 主要比較:人工呼吸を含む蘇生(CPR) vs. 胸骨圧迫のみ
  • 主要結論:人工呼吸の減少、胸骨圧迫のみ増加、胸骨圧迫のみは不良転帰と関連
【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 3

誰が何を調べ、どのように評価したか

本研究は岡山大学の複数の講座・部門の研究者による共同研究として実施されました。研究に名を連ねる主なメンバーは、小原隆史講師(地域救急・災害医療学講座)、野島剛講師(地域二次救急・災害医療推進講座)、塚原紘平講師(高度救命救急センター)、内藤宏道准教授(救命救急・災害医学)、中尾篤典教授、松本尚美助教、賴藤貴志教授らです。

研究手法としては全国レベルの登録データを用いた観察研究で、蘇生時の目撃有無、蘇生法の種類(人工呼吸を含むか否か)、発生年代・発生場所などを変数として転帰(死亡、重度後遺症など)との関連を統計学的に評価しました。解析は複数のサブグループ(例:目撃されていない症例)に対しても行われ、結果の一貫性を確認しています。

研究期間
2012年~2023年の小児溺水関連院外心停止症例
データソース
All-Japan Utstein Registry(総務省消防庁)
掲載誌
Resuscitation(Elsevier)
論文タイトル
Decline in Rescue Breathing and Its Impact on Outcomes in Pediatric Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Drowning: A Nationwide Study, 2012–2023
【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 4

研究の細部:解析対象と評価指標

解析では蘇生の形態別に転帰を評価し、人工呼吸を含む蘇生が行われたか否かを主要な説明変数としました。死亡・重い後遺症といった臨床転帰をアウトカムに設定し、時間経過に伴う蘇生法の変化と転帰の関連性を評価しています。

目撃されていない症例についても個別に解析しており、発見時点での対応の重要性を明示しました。これにより、溺水場面を直接目撃していない発見者がどのような蘇生を選択した場合に転帰が改善されるか、といった実践的な示唆が得られています。

【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 5

臨床的・社会的な示唆と対応の方向性

本研究が示す最も重要な示唆は、小児の溺水に対しては人工呼吸を含む蘇生が依然として重要であるという点です。成人では胸骨圧迫のみの蘇生が普及した経緯があるものの、溺水という機序を持つ小児例には人工呼吸が転帰改善に寄与する可能性が高いことが改めて示されました。

研究グループは、市民に対する小児蘇生教育の充実や人工呼吸を安全に行うための器具(ポケットマスク等)の普及といった社会的取り組みの必要性を指摘しています。感染症流行時の懸念や大人向けの簡易化された蘇生法の普及が、小児救命の観点から思わぬ影響を及ぼしている可能性があります。

  1. 市民向け小児蘇生教育の強化(人工呼吸の実施方法を含む)
  2. ポケットマスクなどの救命用具の普及・携行の促進
  3. 救急医療ガイドラインの周知と年齢別対応の見直し
【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 6

研究者のコメント(報告の要旨として)

プレスリリースでは、小原隆史講師と内藤宏道准教授が、溺水が決して珍しい出来事ではなく誰にでも起こりうる事故であること、そして本研究が人工呼吸を含む蘇生の重要性を改めて示したことをコメントしています。研究者は本研究が子どもを安心して助けられる社会について考える契機となることを期待すると述べています。

このような研究者の見解は、統計的解析に基づく結果を踏まえた実務的な提言として受け止められます。教育・装備・ガイドラインの三方面からの働きかけが求められるという点で、医療現場だけでなく地域社会全体での対応が示唆されています。

【岡山大学】溺れた子どもを救う“ひと息”~市民による蘇生で人工呼吸が減少している現状とその影響~ 画像 7

研究情報・問い合わせ先と要点の整理

本研究に関する論文情報、関連リンク、問い合わせ先は以下の通りです。論文はElsevier社『Resuscitation』に掲載されており、ScienceDirectの該当ページ(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S030095722600095X)から閲覧可能です。論文のタイトルは “Decline in Rescue Breathing and Its Impact on Outcomes in Pediatric Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Drowning: A Nationwide Study, 2012–2023″、DOIは 10.1016/j.resuscitation.2026.111049 です。

また、岡山大学のプレスリリース原文や研究の詳細はPDFでも公開されています(https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20260319-1.pdf)。研究に関する問い合わせ先として、下記の連絡先が案内されています。

本件問い合わせ(報道・一般)
岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)地域救急・災害医療学講座 講師 小原隆史
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
TEL:086-235-7427
プレスリリースURL:https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1511.html
岡山大学病院との連携(製薬・医療機器企業関係者)
岡山大学病院 新医療研究開発センター
問い合わせ:https://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
医療関係者・研究者向け(連携等)
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw@adm.okayama-u.ac.jp
URL:http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
産学官連携全般
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku@okayama-u.ac.jp
URL:https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
研究機器共用(チーム共用)
TEL:086-251-8705 / FAX:086-251-7114
E-mail:cfp@okayama-u.ac.jp
URL:https://corefacility-potal.fsp.okayama-u.ac.jp/
スタートアップ・ベンチャー関連
E-mail:start-up1@adm.okayama-u.ac.jp
URL:https://venture.okayama-u.ac.jp/

参考として岡山大学病院の救命救急科や医学部、疫学・衛生学分野の各ページも案内されています。研究や教育に関心のある読者・関連者は各リンクを参照してください。

項目 内容
発表機関 国立大学法人岡山大学(学術研究院 医歯薬学域 関係各講座・部門)
プレスリリース日時 2026年3月29日 17時25分
研究対象期間 2012年~2023年(All-Japan Utstein Registry)
主要結論 人工呼吸の実施率は減少。胸骨圧迫のみでの蘇生は増加し、死亡や重い後遺症のリスクと関連。
掲載誌・論文情報 Resuscitation(Elsevier), 論文タイトル: Decline in Rescue Breathing and Its Impact on Outcomes in Pediatric Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Drowning: A Nationwide Study, 2012–2023, DOI: 10.1016/j.resuscitation.2026.111049, URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S030095722600095X
関連PDF https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20260319-1.pdf
問い合わせ 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)地域救急・災害医療学講座 講師 小原隆史、TEL:086-235-7427、プレスリリースページ: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1511.html

以上を整理すると、本研究は小児溺水による院外心停止において人工呼吸を含む蘇生が転帰改善に重要であることを示した全国規模の解析です。人工呼吸の減少という現状は、教育・装備・ガイドラインの各面で改めて検討が必要であることを示しています。研究論文および岡山大学の関連情報は上記のリンクから参照可能です。